第245回《1998年1月より》 日本酒と料理を楽しむ会
2018年1月24日開催

飲み干した「低精白酒」、そして「京矢」の料理



この年最初のテーマは、「低精白」だけを集めてみました。

この会開催の20年は、日本酒の維新の歩みといってもいいのではないでしょうか。
市場のシュリンクがむしろ、生産現場の世代交代と飲み手目線のマーケティングを後押ししたように思えます。
伝統を守りつつも進取を取り入れ、いま目の前で、若い感覚でチャレンジングな酒が生まれている、状況です。

その中の1カテゴリーが、「低精白」だと思います。
あまり精米しない米を原料にする、精米歩合でいえば80%とか90%とか。

極限まで精米した酒はマーケティングの美味さもあって、確かに一市場を築きました。
しかしその流れに逆行するように、“磨かない米”で醸す酒を追究する蔵元が増えています。
“いい酒米を選んで心白だけ使えば、誰でも美味しい酒ができる”とでも言いたげに、
低精白米でいかに美味い酒を造るか、そこにこそ蔵の造り手の面白みがある、と。

そこで今回は、全国の蔵から低精白の酒だけを選んでみました。
磨いていないので特定名称は名のれない普通酒(または純米酒)ですが、吟醸づくりと言える丁寧な仕事をした酒ばかりです。
ある意味、蔵の技術力のバロメーターにもなるでしょう。

32人参加という人気となり、低精白の座標軸を作るため、第1回の今回は多くの種類を集めました。

<酒選テーマ>
「低精白 2018のmy座標軸を作ろう」 酒撰:二村宏志

【出品酒】(写真上段左から)


1.『王禄 山田八十』生原酒 精米80% 島根県産山田錦/王祿酒造(島根)
2.『紀土 KID 純米』精米80% 紀州“あがら田”山田錦/平和酒造(和歌山)
3.『いずみ橋 恵 海老名耕地80』精米80% 海老名産山田錦 純米酒/泉橋酒造(神奈川)
4.『貴 濃醇辛口 純米 火入』精米80% 山口県産山田錦/永山本家酒造(山口)
5.『富久福 純米酒 michiko 90』精米90% 兵庫県産特等有機栽培山田錦 無濾過生原/結城酒造(茨城)
6.『開春 イ宛(おん)』生もと木桶仕込み 生 精米90% 島根県産山田錦/若林酒造(島根)
7.『天の戸 美稲 無濾過純米80』精米80% 美山錦/浅舞酒造(秋田)
8.『風の森 雄町 純米しぼり華』精米80% 奈良県産雄町 無濾過無加水生/油長酒造(奈良)
9.『若駒 五百万石 80 無加圧』精米80% 五百万石 生/若駒酒造(栃木)
10.『月の桂 純米 祝80』精米80% 祝(地場復活米 無農薬栽培)/増田徳兵衛商店(京都伏見)
11.『亀齢 辛口純米 八拾』火入原酒 精米80% 広島県地元米/亀齢酒造(広島)
12.『七本槍 純米 80%精米 火入れ』精米80% 滋賀県産玉栄/冨田酒造(滋賀)

写真にはないですが
13.『松の寿 純米八割八分 火入』精米88% 栃木県産とちぎ酒14/松井酒造(栃木)
14.『くろさわ80 きもと造り純米』精米80% 長野県産ひとごこち 生/黒澤酒造(長野)
15.『龍力80 山田錦誕生80周年記念』精米80% 兵庫県産山田錦/本田商店(兵庫)
16.『奥播磨 山廃純米八割磨き 火入』精米80% 兵庫県山田錦/下村酒造(兵庫)
17.『七田 純米無濾過生原酒 七割五分磨き 雄町』精米75% 岡山県産雄町/天山酒造(佐賀)

どれも美味しく、“なぜ高精米にする必要があるのか”と疑問に抱かせるほど。
特には、
1)王禄 山田八十、5)michiko90、6)開春 おん、10)月の桂 祝80、
そして低精白の美味しさを教えてくれた12)七本鎗 純米80玉栄。
皆さんの期待も高くため、次回に取っておこうと思っていた5種も口を開ける事となり、
13)松の寿 栃木酒14、14)くろさわ80、15)龍力の特別記念
も素晴らしかったです!




 
 今月の会場は 旬酒場「京矢」銀座店 
  


なんだか分かりますか?「蛸玉ポン酢」。早春にしか食べられない、タコの魚卵、生!


煮物「あんこう汁」

泉州産玉ねぎ
食事は「焼おにぎり茶漬 粕汁仕立」


焼八寸。左から「本山葵千切り」「帆立時雨煮」「真鱈白子」「カリフラワー酢漬」


「くわい蜜煮」「からすみ」


牡蠣は「素焼きマヨネーズのせ」


お刺身は旬の「鰤のタタキ」  
玉子とじそば
揚物は「ふぐ唐揚げ」

玉子とじそば
ごちそうさまでした


(2018年1月24日水曜日開催)


今回、低精白特集は不肖幹事:ふたむらが酒撰させていただきました。
選んでいく中で混乱したのが、「精白」と「精米」。米の表面を削るという意味では同じなのですが、私もこれまで結果が“反対の意味”だと教えられてきました。でも、蔵によって、また酒販店によって、“低精白は間違い”という方もいれば、“低精米と同じ意味で使ってます”という方もいて、業界の専門家でも統一されていない事が分かりました。古くて新しい、日本酒の世界です。


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