第66回《1998年1月より通算160回》 日本酒と割烹料理を楽しむ会
2010年12月22日開催

飲み干した銘酒・稀少酒と 四谷「酒徒庵」の料理



 『生産量を維持するための酒よりも、造り手の納得いく出来にこだわった酒を 飲みたい。』

全国には千数百の蔵がありますが、この会が始まった160か月前には三千近い蔵がありました。
毎年、100近い蔵が廃業に追い込まれている計算になります。その犠牲になっているのが、もちろん、
数百石以下の生産量の蔵です。(1石とは、10斗100升。1升瓶100本の量です)

多様性維持は、全ての原理に通じる基本です。
小さな蔵の火を絶やしてはいけません。
我らは、呑むぞ。

ということで、今月は、酒徒庵の竹口店長にお願いして、生産量「50石以下の蔵(銘柄)」から
酒の出来にこだわって酒選してもらいました。
皆さん、聞いたこともない銘柄のお酒ばかりだと思います。


通算160回を記録する今月に、ふさわしい企画になりました!

<酒選テーマ>
100石以下の極小蔵特集「吟選蔵稀少酒」 酒選:竹口敏樹 酒徒庵 店長

出品酒(左から)

●「豊賀 特別純米」12石

  高沢酒造(長野県小布施町)
  創業1902年。蔵の娘「高沢賀代子」さんがほぼ一人で醸している。
  代表銘柄は「米川」(生産量200石)で、こちらは、父博さんと近所の酒屋のおじさん、普通の近所のおじさん、
  賀代子さんのご主人(10年神奈川県の7歳年下の婿をゲット)の、5人で醸している。
  少し酸があって、特徴があって美味しい。

●「互」 8石

  沓掛酒店(長野県上田市)
  地元上田の地酒を何とかしたいとの思いに賛同した4社の酒販店と、蔵元の“5社”がタッグを組んで醸造。
  さまざまな場面でこの酒を“たがいに”酌み交わしてもらいたいとの願いから「互」と名付けた、とか。
  20歳の跡継ぎ沓掛ひろゆきさんと杜氏(66歳)で、タンク1本のみ造っている。
  代表銘柄の「福無量」(生産量400石)は、ほぼ普通酒で、杜氏を含めスタッフ5名で醸している。

●「登水 純米生酒」25石

  和田龍酒造(長野県上田市)
  純米酒と吟醸のみで25石生産。醸しているのは、専務の和田澄夫(47歳)さんのみ。
  創業明治20年。先先代の当主和田龍太郎翁が、酒造業の傍ら、葡萄の品種改良も手がけ「ぶどう和田龍」を
  開発し、東信地域で珍重されたことから、酒名にも「和田龍」が使われるようになった。
  「和田龍」の生産量は175石。昭和40年の国の集約製造での免許の関係上、現在の蔵の住所では製造が
  できないため、親戚筋の「長野酩醸(同上田市)」の敷地を借りて製造している。

●「東鶴 純米吟醸」30石

  東鶴酒造(佐賀県多久市)
  多久市に唯一残る蔵で、創業は1830年。本物の酒造りにこだわり、便利になった今も機械を使わないのが
  この蔵のポリシー。木のコシキを使って米を蒸し、箱麹で麹を造り、しぼりは袋吊り。
  しかし現在造りをしているのは、息子さんたった一人。父親は、市議会議員になったのを機に造りを辞めて
  しまいました。その野中やすなりさん(30歳)が生産するのは、30石のみ。今期22BYで造り3年目。
  出身は、東京農大だが、醸造課ではなく水産学科で、北海道オホーツク校舎出身という変わり者。

●「早春 特別純米原酒無濾過中取り」130石

  早川酒造(三重県菰野町)
  生産量130石あるが、地元でほとんど消費されてしまう幻のお酒。父子2人で、造っている。
  もともとは1000石以上造っていたが、『誰が買っているのか、誰が売っているのか分からない商売は嫌だ』
  という息子さんの意向で、この数量までわざと絞った変わり種。他銘柄に「田光(たびか)」。

●「慶喜 特別純米」100石

  杉原酒造(岐阜県揖斐郡)/代表銘柄「射美」
  『酒造りは農業から』。原料の生産から仕込み嗜みまで、とことん地元にこだわった真の地酒造り。
  明治25年創業。現在従業員は、4代目杉原庄司(64歳)さんと5代目慶樹(35歳)さんの、2人のみ。
  米が身体を癒し、稲穂の風景が心を癒す。癒された蔵人が銘酒を醸す。
  原料米「揖斐の誉」は、この蔵が20年の歳月をかけて開発した酒米。常に“背水の陣”の、心意気。

●「米宗 山廃吟醸」25石

  青木酒造(愛知県愛西市)
  造り手は、社長とアルバイト2名。息子さんが2人いるが、医学の道に進んでいるとか。
  ただし、「剣菱」(兵庫)への桶売りで、475石。


 今月の会場は 「酒徒庵」
新宿区四谷1-23 上野KGビル1F   電話03−3351-6119  http://www.shutoan.com/food.html
  

前菜。左から「タラコ糸こん」「海老フリッター」「帆立甘露煮」「ブロッコリ酒盗のせ」「生姜大根巻き」。海老のかぶとはカリカリで、美味しかったです。酒盗がこうすると、ドレッシングなるなんて発見!

先付けの「きのこの旨煮」。

焼き物の「銚子産イワシの一夜干し」。
刺身は「寒ブリ」。いい鰤でした、旨かったあ。
「カニしんじょう餡かけ」。銀杏も食べ納めでしたね。

本日の牡蠣は「岩手県産」尾崎と米崎の2品。贅沢、贅沢! 常連の藤本さんのお裾分け「デコポン」の新種。毎年、九州の実家から送ってきてくださるのだそう。
(2010年12月22日水曜日開催)

『この企画なら、あと5回はできる!』と、企画の意図と酒選(お店)の意図が相思相愛。手書きのメモで、蔵や酒の説明をしてくださる竹口店長。
まだまだ発掘しますよ、極小蔵!

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