第208回《1998年1月より》 日本酒と料理を楽しむ会
2014年12月24日開催

飲み干した「能登衆の酒」、そして「ジャズ」の料理



今月は、「能登衆の酒」を特集しました。

先月も同じ石川の「白山菊酒」を取り上げました。日本唯一の、日本酒での原産地呼称を認められた地域です。
石川県には現在38蔵ありますが、5つの地域の酒造組合に分かれ、
白山菊酒の「石川酒造組合」のほかに「金沢」「小松」があり、
そして、今回は
「七尾」と「鳳珠」、能登杜氏(能登衆)が地に足をつけその伝統を残す地域を取り上げました。
七尾酒造組合に属するのは、現在4蔵。鳳珠には11蔵。
どの蔵も小さいながら、昔のままの酒造りを行っており、おそらくいい意味で、
白山菊酒の活動に刺激を受け、一段、酒質が上がっているのでしょう。

石川県 能登半島には、農林漁業によりもたらされる豊かな恵みがあります。
2011年世界農業遺産に認定され、豊かな自然だけではなく、
農耕にまつわる文化・祭礼や伝統技術、
里山里海に育まれた多様な生き物のつながりがある土地です。
そのような土地で生まれたのが、能登の酒と能登衆です。
能登衆は、その昔、大半は半農半漁で農閑期、海が荒れる冬季に
全国各地に出向いて酒造りに従事したとされ
近年でも静岡の「開運」波瀬杜氏などが有名です。

今回、能登衆の酒を酒撰してくれたのは、
石川県珠洲市出身の高濱克行さん。
昨年春からこの会にもお出いただくようになり、その知見の深さとお酒への情熱が只者ではないので、
半年ほど前から、酒撰人の大役を準備してもらいました。
そもそも、まだ吟醸酒や純米酒というものが一般的に認知されていない頃、
口にした日本酒の美味しさに感激し、それ以降、日本酒を追い求めるようになったとか。
その原点でもある、ふるさとの能登地方の地の酒を紹介するにふさわしい“のんべえ”です。

能登酒の特徴である「濃醇旨口」で、飲み飽きすることのないお酒を揃えてもらいました。



<酒選テーマ>
「能登衆の故郷の酒」  酒撰:高濱克行

【出品酒】(写真左から)

花おぼろ(純米桃色にごり) 中島酒造店
 五百万石 65% +4(アルコール度)9度未満 赤色清酒酵母(日本醸造協会特許酵母)
 繁殖率の低い特殊な酵母を使用し、酵母が作り出す自然な色。
 吟醸造り以上の慎重な造りをしないと上手く発酵せず、ピンク色になる割合も5割程度という難しい酵母。
 全国でも5蔵しか挑戦してないらしい

さきの花野(純米大吟醸) 宗玄酒造
 能登産山田錦 50% 17度   今回取り上げた蔵の中では、人気度・知名度は頭ひとつ抜けている感。
 熟したフルーツの味わいをほんのり感じ、後味が爽快で引きが良く、絶妙なバランスのお酒 。さすが宗玄。

遊穂(純米大吟醸 22BY) 御祖みおや酒造
 山田錦 40% +3 17度 酵母協会9号
 10年2月に絞ったお酒を、低温貯蔵庫にてゆっくりと熟成させた。
 熟成により発揮される穏やかで優しい味わいと、調和した旨味と酸、控えめな香り。
 蔵元(女性)の名「美穂」から1字と「UFO」(出現が多い)をかけて。

谷泉たにいずみ(吟醸無濾過袋どり生原酒 1年ビン貯蔵)
 山田錦 50% +3 19度未満
 吟醸生酒を1年寝かせることで、まろやかなお酒になっている。ラベルはすべて女将の手書き。

伝兵衛(純米酒) 中島酒造店
 五百万石 50% +4 酸度1.4 アル15度
 地の米、地の水にこだわった。田野倉と比べると淡麗系でさらっと飲めるが、旨味をしっかり感じることが出来る。

純粋無垢(純米酒) 宗玄酒造
 山田錦 55% +3 15度 金沢酵母  24BYの旨みのある純米酒。

谷泉(本醸造 原酒) 鶴野酒造店
 能登ひかり 65% +2 19度
 ほとんど生生でしか出荷しないこの蔵らしい旨味。本醸造がしっかり飲める蔵は、注目しておきたいです。

遊穂(山おろし純米 火入) 御祖酒造
 五百万石、能登ひかり 55% +5 16度 酵母協会9号 22BY熟成酒。
 敢えて、山おろし法を採用。生酛の味幅と力強さ、そして軽やかさを併せ持つ酒。

大慶(純米酒) 櫻田酒造
 山田錦 55% -5 16度 金沢酵母協会14号
「大慶」の名は、大漁時に大慶と言って喜びを表した事がその由来。
 ほとんどがが地元消費のお酒で、同じ県内の金沢市でも流通量が少ない酒。
 口当たりが柔らかく、旨味、酸味がうまく絡み合う。

奥能登の白菊(純米吟醸酒) 白藤酒造店
 山田錦36%五百万石64% 精米55% -4 16度 酵母K-10
 上品な甘さと香りの純米吟醸酒。穏やかな味わいの酒。

上記10銘柄は事前に案内したものですが、当日はクリスマスイブということもあって、
サプライズプレゼントを用意しました。
能登衆の重鎮、農口尚彦氏が2013年に齢80にして自らの蔵「農口酒造」を立ち上げました。
地理的には能登から外れるのですが、今回のテーマからして、扱うにふさわしい、いや扱うべきだと。
その記念すべき初年度醸造の逸品、高濱氏が自宅で保存してあった1本を特別に提供していただきました。

【番外(能登地域外)】農口 本醸造 24BY 農口酒造
 名杜氏の農口の渾身の第1作目。精米60%、間違いなく吟醸造りの域!
 高濱氏いわく、新酒時はアル添が表に出て評価もいまいちだったが、1年置いて◎!






 今月の会場は  「オールザットジャズ」 


「自家製燻製の突き出し」。ジャズといえば自家製スモークという印象ですが、今月の鯖燻は絶品!


「茹で 落花生」中でも「オオマサリ」という美味しい品種だそうです。

泉州産玉ねぎ
「ひたし豆」。そっと数の子も忍ばせてあって、高級なおつまみ。


「烏賊のしょっつる炒め」。魚醤は、美味しい。

定番の「ポテサラ」


「大根の一夜漬け」。終盤に嬉しいひと品。


第2弾「自家製燻製」。右は定番のホタルイカ。中は太刀魚の魚卵(らしい)、絶品でした! 左はヒイラギかな?  
玉子とじそば
そして締めの食事は「シラスご飯」。


ごちそうさま。

(2014年12月24日水曜日開催)
高濱氏

酒撰をお願いした高濱さん。
能登ばかりでなく、全国の蔵を巡っているとか! 自宅にもお酒専用の冷蔵庫が複数あるとか!? またぜひお願いします!!





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