第69回《1998年1月より通算163回》 日本酒と料理を楽しむ会 2011年3月23日開催 飲み干した銘酒・稀少酒と 「酒徒庵」の料理 |
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3月11日に起きた東日本大震災で開催を躊躇しましたが、自粛ムードを自粛するとの意図から、今月も良い酒を飲み干しました。地酒を飲んでこそ、蔵も元気に、地域も元気になると願って。 幸いにも、直接の知人が被災された出席者がいなかったようで、せめてもの朗報でした。ただし、泣く泣くキャンセルされた方もいらっしゃり、被害の広範さを改めて思い知らされます。 東北地方の蔵元は多くが被害を受けたとのことですが、人的被害は少なかったように聞き及んでいます。地元発のニュースによれば、3月の末には気仙沼市の「男山」がわずかに残ったもろみから絞りをを始めたとのことです。本当に強い、我らがニッポン、です。 そしてそれは、世界から驚嘆の目で見られています。「日本からの10の学び」という善のチェーンメールが、尊敬の念をもって世界を駆け巡っています。被災時には日本人にとって当然のような行動も、異文化の国ではなかなかできないことのようです。誇りを持って、日本を生きていきましょう。そのためにも、和食を喰らい和酒を寿ぎ続けましょう。 さて、 今回は、早稲田弦巻町で酒販店を営み、きき酒師の資格を持つ、井上貴久さんに酒選をお願いしました。 4年程前から、その活動に注目しており、タイミングがあってようやく今回、ご登場いただけます。 自分で蔵を回り、納得のいくものだけを扱うという姿勢で店を営業されています。店の冷蔵庫には、見たことのない銘柄ばかりが並んでいる、という印象でした。 そして事実、今月は久々“印象に残る”酒を味わうことができました。もちろん、こだわりの酒の会、毎月“旨い”酒には巡り会えていて贅沢者なのですが、印象に残る酒「隆」は、一昨年の「帰山」以来の逸物でした。 飲めなかった方、残念でしたねえ! 本当に、今までにない味わいでした。でもまた次回、井上さんに「隆」特集を組んでもらうことにします。この酒選ができる井上さん、長くお付き合いさせていただくことになりそうです。 <酒選テーマ> 「春 きき酒師の吟選」 酒選:井上 貴久(三伊井上酒店) 新宿区早稲田鶴巻町541 03-3200-6936 出品酒(右から) ●「三千櫻 純米 渡船 袋吊り 生原酒」 22BY(三千櫻酒造/阜県/)滋賀渡船6号55%精米 岐阜県中津川市。酒名は酒造業を始めた山田三千介から由来。 地元の米、水にこだわり極力農薬を使用しない自家栽培米と地元契約農家の米を使用。 県内の他の蔵もその水質を羨む仕込み水は、自社の山から湧き出る清水を使用。 水を守るために木を切らず、植林をせず総天然林を守る。米、水を自前でまかなう蔵は県内ではこの蔵のみ ●「鍋島 純米吟醸 生 赤磐雄町」 22BY(富久千代酒造/佐賀県)赤磐雄町50% 精米蔵は有明海に面した佐賀県鹿島市にある。九州を代表する酒を目指し 「鍋島 」と命名。 02年から現当主の飯盛直喜氏が杜氏を務め、全国新酒鑑評会6年連続金賞受賞。 仕込み水は多良岳山系からの地下水を使用。米はお酒の個性に合わせて6?8種類の酒造好適米を使用。 温暖な佐賀県の酒造りに合わせ、モロミ管理を徹底させるため造りの50%は750キロの小仕込みで行っている。 ●「佐久の花 大吟醸 無濾過原酒 袋しぼり」 21BY(長野県/佐久の花酒造)ひとごこち39%精米 蔵は北に浅間山、南に八ヶ岳を望み、蔵から100メートル西には千曲川の清流があります。 当主高橋氏の信念は 「地酒の本質は、地の材料を使うこと 」。自家田でも栽培を行っている 酒米 「ひとごこち 」を使用した美味しい酒を造ることに情熱を注ぎ、米を全量手洗いするなど 伝統な酒造りを継承。将来的には自分の目の届く範囲は500石までと決め、お酒造りを行っている。 ●「旭興 純米吟醸 無加圧原酒 氷温壱升瓶囲い」 21BY(渡邉酒造/栃木県)山田錦48%精米 那須与一公ゆかりの地、また松尾芭蕉の 「奥の細道 」にも登場する栃木県大田原市の蔵。 「地元で愛されてこそ地酒」という蔵の考え通り、約700石造られるお酒は90%以上 地元大田原で愛されています。酒名は 「朝日(旭)が、昇る(興す)方向 」から命名。 仕込み水は、蔵のすぐ裏手に流れる八溝山系の武茂川の伏流水を使用。 ご子息で杜氏を務める渡邉英憲専務が蔵に入り全国新酒鑑評会で金賞受賞を重ね、 南部杜氏自醸酒品評会でも目覚ましい成績をあげています。 「県北に旭興あり 」といわれ地元で愛されるお酒は、地元だけの秘造酒とは言えないお酒になりつつあります。 ●「隆 純米大吟醸 生 山吹ラベル」 20BY(川西屋酒造店/神奈川県)播州山田錦45%精米 蔵は相模湾の 「海の幸 」、丹沢山の 「山の幸 」が集まる神奈川県足柄上郡山北町にある。 仕込みに使う水は「美味しんぼ」にも登場する丹沢山系の中硬水を使用。関東の食の宝庫で醸す酒を 露木社長は「うちの酒は酒だけで飲んでも良さがわからない。料理と合わせてこそお互いの良さを 引き立てあう」と言う。 隆(りゅう)という酒名は、新しい感動を世に与えるという願いを込めて 「起隆 」から付けられた。 (井上さんに『ナッティ』と教わりましたが、まさにアーモンドのような甘い香りが印象的でした!) ●「酉与右衛門 純米吟醸 斗瓶取り 生原酒」 21BY(川村酒造店/岩手県)阿波山田錦50%精米 全国に数ある杜氏集団の中で、最大の杜氏集団である南部杜氏。その南部杜氏のふるさと、 岩手県花巻市石鳥谷町に蔵はあります。大正11年創業からの蔵は、中に入るとタイムスリップした かのように歴史の重みを感じます。 地元の石鳥谷では「南部関」という銘柄のお酒が親しまれています。 「酉与右衛門(よえもん)」の由来は、16歳から酒造出稼ぎを始め、24歳で杜氏となった 初代当主「川村酉与右衛門」から取りました。 この酒は現当主の直孝氏が、原点に帰り「良酒」造りを初代当主に誓い、命を掛けて醸し出す スペシャルブランドです ●「十旭日 純米吟醸 無濾過生原酒 改良雄町60」 21BY(旭日酒造/島根県)島根県産改良雄町60%精米 蔵は出雲大社で知られる島根県出雲市。酒名は大正天皇(当時は皇太子)が山陰地方を巡行した際に お酒を献上し、木戸孝正侍隊長が「天下一品の美酒なり」と称賛され 「旭日 」と命名。 頭の 「十 」は日蓮宗の霊場 「妙見山 」の紋章から付けられたもので、合わせて 「じゅうじあさひ 」と読む。 ●「生もとのどぶ 仕込19号」 21BY(久保本家酒造/奈良県)五百万石・アキツホ65%精米 蔵は 「又兵衛桜 」で有名な奈良県大宇陀にあります。現当主の久保氏は元銀行マン、ロンドン支社を経て 蔵に入ったという異色の経歴。杜氏は生酉元造りの酒を造りたくて3の蔵を杜氏として渡り歩いた 自称 「純米バカ杜氏 」加藤克則氏。加藤杜氏は 「自分で呑みたい、旨いと思う酒は生酉元造りの純米酒。 自分の飲みたい酒を造っているのにインチキは情けないよ 」と言い、手間のかかる生もと造りを行っています。 |
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今月の会場は 新「酒徒庵」 新宿区四谷3-11 第二光明堂ビルB1F http://www.shutoan.com/intro.html |
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海老と鶏の「粕漬け 焼き」です。酒のつまみに最高の取り合わせですね。 |
先付で「豚の角煮」が出ました。でもコースとしてこの後さっぱり系が続いたので、板さんの意図に納得。 |
刺身「鰹のたたき」。初物! |
店長曰く「宮城産牡蠣は5年はだめだろう』と。でも必ず復活する! 今月は「兵庫県室津湾」産生牡蠣でした。 | 「さきいか磯辺揚げ」。簡単な居酒屋料理、美味しかった。 |
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蒸し物「鰆と筍道明寺蒸し」。割烹屋さんのような、春らしい気遣いの高級逸品でした。 | 「牡蠣の味噌煮汁」。さすがに牡蠣の店酒徒庵。食事の椀にも、こだわりが。 |
締めの食事は「焼きおにぎり」。 |
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(2011年3月23日水曜日開催) 先代まではビールで稼いでいた普通の酒屋さん、井上さんも遅く引継がれたので酒販業界での修行もなく任されることに。「知らない者こその強みで、手間ひまかけて地酒を集めるのが当然」と思ってやって来たら、独自性のある店になっていた、という感じ。 今後とも酒選、お願いします |
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